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 人のよさそうな、グレーの髪のエフレム神父が、私を生徒たちに紹介する。
      
      「今日からこのクラスに転入することになった、マリア君だ。法王庁から派遣され、昨日から寮生として学園内に住んでいる。彼女から学ぶことも多いだろう。皆、仲よくね」
      
      「マリアです。よろしくお願いします」
       私は教室の前で、ぺこりと頭を下げる。
      
       男子生徒たちは皆、ヒソヒソとささやく。
      「エクソシスト科って、女は入学不可のはずじゃ……?」
      
      「特例だってさ……法王庁からの紹介だからな。でもエクソシストのくせに、自分が悪魔憑きらしいぜ?」
      
      「それが本当なら、他人より、早く自分の悪魔を祓ったほうがいいんじゃないか?」
      
       学生たちのヒソヒソ話を聞く限り、私はあまり歓迎されていないらしい。
      
      
       そして、その日の午前の授業が終わった。
      
      「マリア! お昼、食べにいかない?」
       私の冷めた思考を、大きな明るい声が中断させた。
      
       振り向くと、笑顔の少年が立っていた。確かエクソシスト隊の隊員で、キリトと呼ばれていた少年だ。
      
      「でも、私と仲良くすると、隊長さんに怒られない?」
      
      「まあね。でも、せっかく同じ寮生だし。仲良くしようぜ……って、痛ッ!」
      
      「キリト。お前、勝手な真似をするな」
       キリトは耳をつねられて後ずさった。
      
      「宗像さん! ……お昼くらい、いいじゃないですか!」
      
      「あのな、お前は、スピリタス隊で成績最下位なんだぞ。女にウツツを抜かしてる場合か!」
      
      「それとこれとは、関係ないでしょう!? なあ、マリア……って、あれ……居ない??」  
      
       私は、宗像さんとキリトを置いて、教室を後にしていた。
      
       空は暗く、今にも降り出しそうだ。
      
       
      
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